FRAGMENT 刻印 F.+2

忘れないうちに感想を残します。

弘前劇場公演2005『FRAGMENT 刻印』『FRAGMENT F.+2』 同時公演
【場所】スタジオ・デネガ
【作・演出】長谷川孝治
【出演】
『FRAGMENT F.+2』鈴木真、山田竜大、永井浩仁、斉藤蘭、工藤早希子、平塚麻依子、櫻庭由佳子(一部ダブルキャスト
『FRAGMENT 刻印』福士賢治、野有希、青海衣央里
【料金】
一般前売・予約 2,800円
学生前売・予約 1,000円
当日券 3,000円

初めて弘劇を観たのは、「家高」だった。次に観たのは、「背中から40分」だった。その次が「ケンちゃんの贈りもの」で、今回の舞台は4作品目になる。
中でも格別なのは、やはり「ケンちゃんの〜」だ。しかし、最初に観た「家には高い〜」の衝撃も忘れられない。正直、今回の作品は好みではないものだった。好みではない、というか……私に向いていないというか。でも、福士さんを観れただけで、結構満足なところもある。彼は、私の中で無条件に好きな俳優さんになりつつある。
「刻印」は、女の深い心理を、「F.+2」は男の深い心理を濃密に描いたと言おうか。前者は至って静かに、後者は激しく表現してあり、その対比が鮮やかだった。
それぞれについてメモを。
「刻印」について。淡々と進む3人の会話。そこからとある故人が浮かび上がり、その故人を鍵として3人の関係性が浮き彫りになって来る。一枚の油絵を鑑賞しているような感覚。いい絵画というのは、時間をかけて眺めていると、同じ絵を見ているのに時間差でいろんな発見があるものだ。そうすると、見え方も違ってくる。と思う。風景は変わらないのに、会話が進むにつれて見え方が違ってくる。でも、その風景は美し過ぎて、そこに生きているリアリティーが感じられない。
「F.+2」について。男2人の会話が軸となり、舞台は進む。怒鳴り散らす性悪な先輩と、割とまじめなその後輩。そこに通りかかる女とサーファーのおっさん。会話の中にだけ出て来る先輩の奥さん。その互いの関わり方をスウェードに置き換えると、スウェードを逆撫で、毛羽立たせる先輩。それを必死で撫で付けようとする後輩。マイペースに撫で付ける女。撫で付けられようと、逆撫でられようと、あらがわないおっさんサーファー。すごく男臭い作品。男の人ってわからない。でもって、先輩の奥さん。こんな出来た女は存在しない。こんな男に都合のいい女は存在しない。この女性は、男の理想でしかないと思う。私の斜め後ろに座っておられた殿方は、後半からクライマックスにかけてずっとすすり泣いておられた。男性にとっては、共感するところがある、または心打たれる作品なのだろう。悲しいのはわかるのだが、距離を置いて客観的に理解するだけにとどまってしまった。