よい人と、そうでない人

会社帰り、会社の真ん前の路地を歩いていたら、人の良さそうなご婦人に声をかけられました。
盛岡駅の正面に出るのはどうしたらいいでしょう?」
その場で何度か説明したものの、理解できないらしく、相当お困りのようだったので、同行してお連れすることにしました。ご婦人は、寡黙な青年を一人、連れていらっしゃいました。よくよく話を伺ってみると、目的地は盛岡駅ではなく、大通りの路地にある宿泊先のホテルのようで、盛岡駅を目印に向かっていらっしゃった途中で細い路地に迷い込んでしまったようです。釜石からいらっしゃったというお二人は、盛岡の地理にとんと疎く、察するに初来盛だったのではないでしょうか。聖書の大会なるものがここ数日、アピオで開催されており、それに参加するために来盛したとのお話でしたので、きっと釜石のキリスト教団体の方々だったのでしょう。
目的地のホテルまでお二人をお連れすると、ご婦人はおもむろにバッグから数千円を取り出し、
「本当はお礼のお手紙でも差し上げればよろしいんでしょうけれど、お礼に受け取ってください」
と、私に手渡してきました。私は、思いもよらない謝金の登場に面食らい、慌ててその差し出されたものを「とんでもない!」押し返し、
「そんなたいそうなことはしていません。とても受け取れません。このお金は、もっと有効にお使いください」
と告げました。どうしてもと食い下がる婦人の申し出をかたくなに断り、お二人に簡単にお別れを言ってホテルを後にしました。
……あの2人は、あの調子で、無事に釜石まで帰れるのでしょうか?人ごとながら、不安……
で、今日のこの出来事で思い出したことが一つ。
去年の冬も、ほぼ同じ場所でとある男性に声をかけられたことがあったなぁ、と。
遠慮がちに、礼儀正しく、スーツ姿の男性が声をかけてくるもんだから、てっきり道を尋ねられるのかと思いきや、
「あなたのことをずっと見てました。お友達になってください」
だもんな。びっくりするっつの。今思えば、あの時は待ち伏せされてたと思う。
言葉もつっかえつっかえで、自分の名前を名乗るのも忘れるほどに、見てて可愛そうなほどに緊張してる様子と、余りの礼儀正しい感じに、なんだか哀れになってメアドを教えてあげたけど、その数ヶ月後、調子に乗ってセクハラメールを何度か送ってきやがったので容赦なく説教してやったら、それっきりパッタリと連絡が来なくなったけどね。アホが。
メアドを教えて、「じゃぁ」と別れた直後に何気なく振り返ったら、その人が緊張から解き放たれたのか、猛ダッシュで走り去って行く後ろ姿を見たときは微笑ましくさえ思ったのに。
ただ、いつも街で見かけるだけの名前も知らない女の子に「友だちになって」と声をかける勇気は買うがな。もはや奴は、私の中で変態のレッテルを張られておるよ。名前も思い出せんし。
と、まぁ、あんなこともあったなぁって、ふと思い出した。
時々気になるのは、「ずっと見てました」って言ってたけど、今もどこかで見られてるんだろうか?ちょっと怖くね?