真綿

先週観たお芝居。病み付きになって、3回観たお芝居。
観たのは黒、紅、黒の順番。紅も黒もそれぞれの魅力があってよかったけど、最初に観たインパクトが強いのか、黒ver.の方が印象に残ってるし、好きだったかも。
それにしても、やっぱりやる役者によって、こうも変わるもんか!という発見が結構ありました。まぁ、意図的に異なった演出が入ってる部分がその大きな要因になってるのかもしれませんが。何度観ても楽しめる芝居でした。
例えば、鷹也は黒と紅で見事なまでにキャラが全然違うし、高村さんは旦那様に取り憑かれたようなハマりっぷりだったし、よしみさんはどうしてこうも耐える女が似合うのだと唸ってしまうし、國久さんはもうそういう星の下に生まれてきたんだろうなって感じの泣く子も黙るような絹子節だし、綾香さんはキラキラどころじゃなくってギラギラ、ビカビカと輝いていたし……まぁまぁ、挙げるといろいろ出てきます。際限なく。
でもって、衣装。何と言っても衣装。いいねぇ、着物。いいねぇ、メイド。いいねぇ、ドレス。いいねぇ、ネグリジェ。いいねぇ、いいねぇ。オベラカーテンを使って、次々とシーンが展開する舞台だったので、具象の装置がない分、衣装と小道具で魅せてくれた印象。
あと、いかにもな昼ドラ的展開もステキだった〜。笑った〜。そうそう、今回の芝居で結構気に入ってる展開の一つが、笑子にまつわる後半のストーリーなんです。したたかにも鷹也をモノにするあたりの展開が好き。「代わりに断ってきてあげるよ」って操子に言うあたり、手放しで100%操子の味方と信じられてきた笑子が、操子に隠れて何かをたくらんでる空気を少し出すところ。もちろん、操子を裏切ることではないんだけど、100%味方の友達がしたたかなオンナの一面をちらつかせるあたりが、いい。
すごく良かった芝居だったんですが、ちょっと気になった点も幾つか。まぁ、一個人の好みの問題によるところが多いかも。まず、気になったのが多恵に何故杖を持たせなかったのか。なんだろ?演技の上で邪魔だったからかな?でも、持たせた方が絶対、両ver.とも動きがスマートになったと思うし、それによって多恵のキャラクターの上品さが増したと思うけど……あと、ユリの花の扱い方。まぁ、昼ドラ的にデフォルメした演技だったからかもしれないけど、結構扱いが雑で気になりました。落ちたユリを集めて花瓶に生けるとことかね。一本花が逆さになっててもギュウギュウと花瓶の中に押し込んだり、花瓶に花を生けたときに花がほどんど後ろ向きで正面を向いていなくてもそのままだったり……きちんと教育を受けたお嬢様育ちだったら、そこら辺の気遣いはもっと繊細でもいいのでは?お花を生ける時は、正面をきちんと意識しないとね。あと、多恵の部屋から良三が操子を救い出した後の使用人の休憩室でのシーン。あのとき、良三が操子に「済みません」って誤って、それに対して操子も「いいのよ」って返すんだけど、そのやりとりがイマイチ意味がわかんなかったなぁ。廊下で泣いてる操子に声をかけてあげられなくて誤ってるのかな?だとしたら、操子はあのとき後ろに声をかけ損なった良三がいたことに気づいてるそぶりはなかったから、良三の「済みません」に対して「何が?」ってなるはず。それとも、私が気づいてないだけで違う意味が含まれてたのかしら?じゃなかったら、あのやりとりはなくていい台詞だったと思うけど……
あと、黒ver.の操子やった小笠原さん。彼女の演技がちょっと気になりました。もしかして、小笠原さんって歯並びとか歯の噛み合わせが悪いんじゃないかな?私と同じ発声の弱点を持ってる。さ行を発音するとき、極端に空気がスースーと抜ける。私も「さしすせそ」がスースーと空気が抜けるので、歯の矯正を勧められたことがあるけど、歯並びが悪いとああいうふうに空気が抜けて聞きづらいんだよね。その上、小笠原さんは、今回の役柄のせいもあるんだろうけど、ため息系というか、吐息系の演技が多くって……彼女の台詞には、やったらスースー、ハァハァという息の音が耳につきました。悲しみや苦しみなど、感情がそういうふうに高ぶる演技のときに決まってため息&吐息の多い演技になってたなぁ。そればっかりだと演技に幅が出ないと思うけど……これから経験を積んで、いろいろ引き出しを多くして行くことを期待します。さ行で空気が抜けるのは、気をつけて発音すれば、幾分かは改善されると思うし。
それにしても、強く、強く「出たい!芝居がしたい!」と思わせるような舞台でした。……まぁ、そもそも出れなかったんだけど。